映画素人の映画評論

「Amazonプライムビデオで映画を観たいけど何を観たらいいか分からない」という方のために、実際にAmazonプライムで観た映画を評論していきたいと思います。ぜひ参考にしていただければ嬉しいです。

#16『光の旅人 K-PAX』

『光の旅人 K-PAX』

・あらすじ

精神科医であるマーク・パウエル(ジェフ・ブリッジス)のもとに精神病を患う新たな患者(ケヴィン・スペイシー)が送られてきた。
その患者は自らをプロートと名乗り、地球から1000光年離れたこと座にある惑星K-PAXから来た異星人であるとマークに告げる。
どんなに突拍子のない話であっても、親身になって患者の話を聞かなくてはいけないのが精神科医の務め。
マークはプロートの胡散臭い話を真剣に聞いてあげるのだが、話を聞いていくうちにだんだんとプロートの話が真実味を帯びていると感じ始めるのである。
やたら天文学に詳しいプロートは単なる精神病患者などではなく、本当に遠い惑星からやってきたK-PAX星人なのであろうか。

・他の入院患者を治していく

プロートが精神病患者などではなく、本当にK-PAX星人なんじゃないかと思わせる言動は作中においてたびたび見受けられる。
たとえば、北の方に旅へ行くと言って3日間ほど姿をくらましたり、数名の天文学者しか知らないような天文学的な知識を持ち合わせていたり、ただの精神病患者では不可能なことをプロートは平然とやってのける。
その中でも特に印象深いのが、ほかの入院患者の状態を良くしていくということである。
「大切な人が来るのを待っている」と言って、自分の部屋から一歩も外へ出ようとしなかった女性を他の患者を使って見事に出させたり、世の中には菌やウイルスがうじゃうじゃいると言って常にマスクをし、外界とのかかわりを持ちたがらなかった男性を、これまた他の患者を使って死に対する恐怖を無くしてあげたりと、少々荒っぽいやり方ではあるが、的確に状態を良くしてあげたのだ。
そのようなシーンを観ると、「プロートは本当にK-PAX星人なのではないか」と思ってしまう。

・最後まで観れば真実が分かる

ストーリーの流れからすると、プロートは本当にK-PAX星人なのか否かということを視聴者に考察させようとするのが狙いなのかと思いきや、本作を最後までしっかりと観れば真実が分かるようになっている。
もちろんハッキリとは断言していないのだが、今までの流れを観て少し考えればちゃんと答えが出ているといってもいいだろう。
ここで答えを言ってしまうとネタバレになってしまうため詳細については述べないが、気になるという方は最後までしっかりと観て、ご自身の目で答え合わせをしてみてほしい。

Amazonプライムビデオおすすめ度

★★★★☆(4点/5点満点中)

タイトルやパッケージ写真を見ると、何となくSFっぽいストーリーを想像していたのだが、実際には全く異なるジャンルであった。
個人的にはプロートが本当にK-PAX星人だったかどうかをもう少しわかりづらくしてもらい、終わった後も色々なシーンを思い返して考察したかったのだが、ハッキリと分かるような内容だったため、余韻に浸ることが出来なかったのが少々残念に感じた。
ただし、最後まで楽しんで観ることが出来る内容になっているとは思うので、興味があるという方はぜひ観てみてほしい。

・スタッフ・キャスト

【監督】

イアン・ソフトリー

【原作】

ジーン・ブリュワー

【脚本】

チャールズ・リービット

【制作】

ローレンス・ゴードン、ロイド・レビン、ロバート・F・コールズベリー

【キャスト】

プロート:ケヴィン・スペイシー
マーク・パウエル:ジェフ・ブリッジス
レイチェル・パウエル:メアリー・マコーマック
クラウディア・ヴィラー:アルフレ・ウッダード
ハウイー:デヴィッド・パトリック・ケリー

#15『犯罪都市 THE ROUND UP』

犯罪都市 THE ROUND UP』

・あらすじ

移民韓国人による韓国人観光客を狙った犯罪が増えているベトナム
そんなベトナムの韓国領事館に自首してきた犯罪者のユ・ジョンフンを引き取るため、クムチョン署の強行犯係に所属するマ・ソトク刑事(マ・ドンソク)と班長のチョン・イルマン刑事(チェ・グィファ)はベトナムへ向かった。
犯罪者自らが領事館に出頭してくるのはおかしいと感じたソトク刑事に痛めつけられながら理由を問われたジョンフンは、仲間のイ・ジョンドゥから命を狙われていると告白するのだが、ソトク刑事とイルマン刑事が教えられた居場所に向かうと、そこには死体となったジョンドゥがいたのだ。
ジョンドゥが殺されたと知ったジョンフンは、ようやく本当のことを話し始める。
多額の身代金を目的として韓国人を狙った誘拐殺人を行うカン・ヘサンという人物と共にとある誘拐事件を起こしたのだが、途中で人質である青年実業家のチェ・ヨンギを何のためらいもなく殺してしまうヘサンに対して恐怖を抱き逃げ出したということなのである。
それを知ったソトク刑事は異国の地ベトナムでカン・ヘサンを捕まえようと捜査するのだが、果たして無事に凶悪な犯罪者であるカン・ヘサンを捕まえることが出来るのであろうか。

・敵役の残忍さが恐ろしい

敵のボスであるカン・ヘサンはとにかく残忍であり、相手を何のためらいもなく簡単に殺してしまう様子を観ていると絶対に近寄りたくないなと感じてしまう。
そんなヘサンを異国の地ベトナムにおいてソトク刑事たちは追い詰めようとするのだが、韓国の刑事がベトナムで捜査をするのは当然ながら違法行為であり、それがばれたら強制送還されてしまう。
そんな状況において、自分の身にも危険がおよぶかもしれない相手を追い詰めようとするソトク刑事は正義心に満ち溢れた立派な刑事なのだなと感心する反面、そんな恐ろしい相手は現地の警察に任せて自分の任務だけを完了させてさっさと帰ってくればいいじゃないかという想いが観ていて芽生えてしまった。
自分だったら絶対に後者を選ぶだろうなと思ってしまったのは、きっと筆者だけではないと思う。

・主演は我らのマ・ドンソク

本作で主演のマ・ソトク刑事役を演じているのが、筆者が大ファンであるマ・ドンソクである。
他の作品でもそうなのだが、豪快に相手を殴り飛ばすアクションシーンを観ていると、本当にスカッとするし、ついつい夢中になって観てしまう。
それはきっと彼の武器とも言える強靭な肉体があるからなのであろう。
ジャッキーチェンのアクションも観ていてものすごいと言えるが、マ・ドンソクの場合はパンチ一発一発がめちゃくちゃ重く、殴られた相手がまるでハンマーで殴られたみたいに吹っ飛んでいく姿を観ると、「破壊の限りを尽くせ」などと穏やかではない自分が心の中で叫んでいるのが分かる(笑)
あくまで刑事として悪役を叩きのめしているのだが、彼のパンチを観ているとドラクエでいうところの「つうこんのいちげき」というワードがピッタリ当てはまるのではないかと思ってしまう。
とにかくそんなマ・ドンソクのアクションシーンは観ていてものすごくスカッとするので、まだ観たことがないという方はぜひ観てみてほしい。

・おすすめ度

★★★★★(5点/5点満点中)

とにかくマ・ドンソクのアクションシーンを観てほしい。
それだけでも十分満足出来る作品であるが、ストーリーも素晴らしく観ていてハラハラするような内容となっている。
またパク・チファン演じる元イス組のボスであったチャン・イスのキャラクターもとてもユニークで個人的には好感が持てると感じた。
マ・ドンソクを知らないという方にも自信を持っておすすめできるので、ぜひ騙されたと思って観てみてほしい。

・スタッフ・キャスト

【監督】

イ・サンヨン

【脚本】

キム・ミンソン、イ・サンヨン、イ・ヨンジョン、マ・ドンソク

【制作】

ユ・ヨンチェ、マ・ドンソク

【キャスト】

マ・ソクト:マ・ドンソク
カン・ヘサン:ソン・ソック
チョン・イルマン:チェ・グィファ
チャン・イス:パク・チファン
オ・ドンギュン:ホ・ドンウォン
カン・ホンソク:ハジュン
キム・サンフン:チョン・ジェグァン

#14『バーン・アフター・リーディング』

バーン・アフター・リーディング

・あらすじ

仕事上で自分のポジションを奪われたオズボーン・コックス(ジョン・マルコヴィッチ)はその場で上司とケンカをし、長年勤めていたCIAを勢いで辞めてしまう。
勢い余って仕事を失ってしまったオズボーンは新たな収入を得るために自伝を書きだすのだが、彼との離婚を考えている妻ケイティ(ティルダ・スウィントン)によってその内容が記録されたCD-Rを持ち出された挙句紛失してしまう。
一方スポーツジムに勤めるリンダ・リツキ(フランシス・マクドーマンド)は、全身整形を行うための費用をどうやって捻出するか悩んでいた。
そんな中、彼女の職場であるスポーツジムのロッカーにて同僚のマノロが落とし物を見つけるのだが、これがまさしくオズボーンの自伝の下書きが記録されたCD-Rなのである。
そうとも知らずに同僚のチャド(ブラッド・ピット)たちと中身を確認したリンダは、書かれた内容からCIAの機密情報であると勘違いをし、それをネタに持ち主のオズボーンをゆすって金銭を脅し取ろうと企てる。
この勘違いから生まれた恐喝事件は、果たしてどのような結末を迎えるのだろうか。

・監督はコーエン兄弟

本作を手掛けたのは、「赤ちゃん泥棒」・「バートン・フィンク」・「ファーゴ」・「ビッグ・リボウスキ」など数々の名作を生み出してきたジョエル・コーエンイーサン・コーエンからなるコーエン兄弟である。
特に「バートン・フィンク」はカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した超名作であり、彼らの名前を世界中に知らしめた作品であると言っても過言ではない。
かくいう筆者もコーエン兄弟監督の大ファンであり、本作を観るのも非常に楽しみであった。

・チャドのキャラは最高に面白い

ブラッド・ピットが演じたチャドのキャラクターは個人的にものすごくはまった。
たとえば、リンダたちと一緒にCD-Rの中身を確認した際に、内容を見てCIAの機密情報だと勝手に決めつけるのだが、「日付に数字、また日付に数字・・・、これ相当やべえよ」と、「お前絶対に意味も分からず言ってるだろ」とツッコみたくなるようなことを言ったり、緊張感のある場面でも音楽を聴きながら変な踊りを踊ったりと、めちゃくちゃいいキャラしているなと思った。
そこらへんはコーエン兄弟らしいユーモアさがあって良かったなと思う。

・期待はずれ感は否めない

コーエン兄弟の大ファンである筆者だが、本作を観た感想はと言うと「うーん・・・」といった感じである。
本当にコーエン兄弟が監督と脚本を務めたのかと疑ってしまうような出来であり、少々がっかりしてしまった。
ところどころでコーエン兄弟らしいコメディ要素もあったため、途中少しは楽しめたのだが、やっぱりちょっと物足りないなと感じてしまう。
ひょっとするとコーエン兄弟だと思わないで観たら、もう少し楽しいと感じたのかもしれないが、初めから「コーエン兄弟の作品だ」と構えて観てしまったため、期待値がものすごく上がってしまったのであろう。

・おすすめ度

★★★☆☆(3点/5点満点中)

小さなことの積み重ねで物事がどんどんと複雑になっていくという様を描きたかったのかもしれないが、そこまでのめり込んで観ることが出来なかった。
ブラッド・ピットジョージ・クルーニージョン・マルコヴィッチなど、超大物スターが共演していたにもかかわらず、何か物足りなさを感じさせてしまう出来にはもったいなさを感じてしまう。
コーエン兄弟の他の作品は文句なく素晴らしいものばかりなので、この作品が彼らの黒歴史となってしまわないことを願っている。

・スタッフ・キャスト

【監督・脚本】

ジョエルコーエン・イーサンコーエン

【キャスト】

ハリー・ファラー:ジョージ・クルーニー
チャド・フェルドハイマー:ブラッド・ピット
オズボーン・コックス:ジョン・マルコヴィッチ
リンダ:リツキ:フランシス・マクドーマンド
ケイティ・コックス:ティルダ・スウィントン
サンディ・ファラー:エリザベス・マーベル
テッド:リチャード・ジェンキンス
CIA上官:J・K・シモンズ

#13『きさらぎ駅』

『きさらぎ駅』

・あらすじ

本作は匿名掲示2ちゃんねる発祥の都市伝説「きさらぎ駅」を題材にした映画である。
大学生の堤春奈(恒松祐里)は大学の卒業論文のテーマとして選んだ「神隠し」を追及していくうちに、2004年に行方不明となりそれから7年後の2011年に見つかるまで異世界にいたと主張する元高校教諭の葉山純子(佐藤江梨子)の存在を知る。
純子いわく勤務先である高校からの帰りに家路につくため、新浜松駅から23:40発の電車に乗ったところ、気が付いたら電車の外には見たこともない風景が広がっており、やがて聞いたこともない「きさらぎ駅」という駅に到着したというのである。
一聴すると眉唾物のようにも聞こえる話であるが、そんな話に興味を持った春奈は純子の所在地を探し当て取材をさせてもらうことになった。
純子から話を聞いていくうちに、異世界に行くための条件があるのではないかと気づいた春奈は取材の帰りにその方法を実践してみることにする。
半信半疑で電車に乗った春奈だったが、ふと気が付くと目の前には純子が語っていたような景色が広がり、やがて春奈の乗った電車はとある駅に到着する。
電車が停車した駅の看板にはこう記されていた。「きさらぎ駅」と。
果たして春奈は迫りくる様々な恐怖から逃れ、無事に異世界から脱出することが出来るのであろうか。

・内容は本家とは別物

本作は匿名掲示2ちゃんねるにて建てられたスレッドをもとに作られた映画であるが、内容は本家とは大きく異なっている。
そもそも2ちゃんねるに書き込まれた内容は、はすみという投稿人が一人で異世界に迷い込んでしまったのに対して、本作では純子の他にガラの悪い3人の若者(岸翔太・飯田大輔・松井美紀)、酔っ払いのサラリーマン(花村貴史)、純子の勤める高校に通う女子高生(宮崎明日香)の5人が一緒に「きさらぎ駅」を降りることになるのだ。
そして純子を含めた6人で行動を共にしていくという流れになっている。
とはいえ、「きさらぎ駅」に着く前に通過した伊佐貫トンネル、線路を歩いている彼女らに対して「おーい危ないから線路の上を歩いちゃダメだよ」と注意してくるおじいさん、伊佐貫トンネルを渡り終えた先に現れ車に乗せてくれるという親切なおじさんなど、本家と同じシーンもところどころに見受けられる。

・人間のいやしい部分が垣間見える

純子は自身の勤める高校の生徒である宮崎明日香を助けることが出来なかったことをとても悔やんでいる。
出来ることであれば今でも彼女を見つけ出して助けてあげたいと思っているのだが、あの後何度も同じ電車に乗っても二度と「きさらぎ駅」にたどり着くことが出来なかったという。
そんな話を聞いた主人公の春奈は自身の論文のためと明日香を助けるために「きさらぎ駅」へ行こうと決心するのだが、本作のラストを観て人間のいやしい部分が見えてしまったようで鬱々としてしまった。
あまり述べてしまうとネタバレになってしまうため詳細については語らないが、それぞれの人間の思惑が交差して少し期待を裏切られてしまったというのが正直な感想である。
そういう意味では視聴者の期待を上手く裏切るという構成はとても素晴らしかったと思う。

・おすすめ度

★★★☆☆(3点/5点満点中)

ラストのどんでん返しはいかにもホラー映画といった感じでよかったのだが、全体的に映像がチープな感じがして見づらかった。
夜という設定なのだが、明らかに昼間に撮影して暗いエフェクト付けてるだけでしょっていうところとか、なぜだかカメラの視点が純子目線になっているため観ていて酔いそうになったりとか、いかにも低予算で作りました感が否めなかったのが残念である。

・スタッフ・キャスト

【監督】

永江二郎

【脚本】

宮本武史

【キャスト】

堤春奈:恒松祐里
宮崎明日香:本田望結
葉山純子:佐藤江梨子
松井美紀:莉子
飯田大輔:寺坂頼我
岸翔太:木原瑠生
花村貴史:芹澤興人
葉山凛:瀧七海
大園葵:堰沢結衣

#12『ファイティン!』

『ファイティン!』

・あらすじ

幼いころにアメリカに養子に出された韓国人のマーク(マ・ドンソク)は、持ち前の腕っぷしを武器にアームレスリング(腕相撲)のチャンピオンを目指すという過去を持っていたのだが、腕相撲協会を除名されてからはクラブの用心棒を務める毎日を送っていた。
そんなある日、マークは自分のことを「兄貴」と慕うジンギ(クォン・ユル)の口車に乗せられて、韓国へ渡り再び腕相撲の世界に身を置くことになる。
久久に生まれ故郷である韓国に戻ってきたマークは、実の母親に会うため自身の生家に行くのだが、そこで妹のスジン(ハン・イェリ)・甥っ子のジュニョン(チェ・スンフン)・姪っ子のジュニ(オク・イェリン)と出会い、成り行きで彼女らと一緒に暮らすことになるのである。
初めて出会う家族という存在に喜びを感じながら、韓国で腕相撲を再び始めたマークは、果たして大会でチャンピオンになることが出来るのであろうか。

・主演はマ・ドンソク

主演のマークを演じるのは、筆者が個人的に大好きな俳優マ・ドンソクである。
彼の存在は初めて知ったのは「スタートアップ!」という映画であり、そこで筆者はものすごい衝撃を受けた。
「韓国にはこんなにすごい俳優がいるんだ」というのが彼を初めて観たときの感想なのだが、とにかく存在感がものすごいのである。
中途半端なロン毛とだらしなく太った体系をしたおっさんが威圧感たっぷりで中華鍋を振っている姿は一瞬ぎょっとするのだが、すぐに慣れ親しんでいき最終的にはそんな彼に心を奪われているのだからとても不思議だ。
このような俳優は日本にはなかなかいないのではないだろうかと思う。
とにかくそんなマ・ドンソクに心を奪われた筆者は、Amazonプライムビデオで観られる彼の作品はほとんど観尽くしたのである。

・アームレスリング(腕相撲)というあまりなじみのない競技

本作においてスポットライトが当てられているアームレスリング(腕相撲)であるが、正直言ってあんまりピンとこないという人も多いのではないだろうか。
友達との力比べで遊びとしてやった経験がある人は多いかもしれないが、実際に競技として公式に行われている大会に出場したことがあるという人はもちろん、そのような大会を観覧したことがあるという人も少ないのではないかと思う。
実際に作中においてジンギが「誰も腕相撲なんか見ていない」というセリフを発しているくらいなので、認知度はかなり低いものであるということが見て取れる。
「いや、それお前が言うなよ」と心の中でツッコミを入れたくなってしまったが、そんなジンギの心無いセリフにも負けずに、ひたすらにチャンピオンを目指すマークの姿には感銘を受けたという人も多いのではないだろうか。
これは余談であるが、これほどまでに腕相撲が似合う俳優はマ・ドンソク以外に見当たらないと思えるほど、彼は役にピッタリとはまっていたと個人的に思うのであった。

・お決まりのパターン

マ・ドンソクが出演する映画では時折、彼を慕う弟分的な存在が純粋無垢な彼を上手く言いくるめてどんどんと悪い方向に向かって行ってしまうというパターンがあるのだが、本作もまさにそのようなパターンではないだろうか。
父親が多額の借金を背負っているジンギが、兄貴的な存在であるマークを上手く口車に乗せて違法賭博の選手として出場させることから始まるのだが、そのスポンサーとして声をかけた相手が厄介者であり、彼らは次第に追い詰められていってしまうというストーリーである。
しかしスポーツ競技がメインテーマということもあり、本作は他の映画に比べてそこまで荒々しいシーンがなかったのが印象的であった。
たいていぶちぎれたマ・ドンソクが相手のところに乗り込んでいき、何十人といる敵をボコボコにしていくというのがお決まりのパターンなのであるが、そこまでの乱闘シーンがなかったため、そういう意味では少し安心して観ることが出来たのではないかと言える。
まあおそらく因縁の決着は試合で着けようという、スポーツマンシップに則った考えなのであろう。

・おすすめ度

★★★★☆(4点/5点満点中)

筆者の願いとしてはとにかくマ・ドンソクという俳優がいかに素晴らしいかを知ってもらいたい。
彼の出演作品を観てもらうと分かるのだが、「見た目は怖いけどどこか憎めない」という印象を持つ人も多いのではないかと思う。
本作ではまさに彼の得意分野であるともいえる腕っぷし自慢が題材とされているので、より一層彼の良さが分かるのではないだろうか。
観はじめる前は正直「腕相撲を題材にした映画?ちょっと微妙だな・・・」などと思っていたのだが、最後には感動して涙を抑えるのに必死だった。
それほど自信を持っておすすめできる映画であるので、マ・ドンソクを知らないという方もぜひ試しに観てみてほしいと思う。

・スタッフ・キャスト

【監督・脚本】

キム・ヨンワン

【キャスト】

マーク:マ・ドンソク
ジンギ:クォン・ユル
スジン:ハン・イェル
ジュニョン:チェ・スンフン
ジュニ:オク・イェリン
コンボ:カン・シニョ
ユ・チャンス:ヤン・ヒョンミン
パンチ:イ・ギュホ

#11『恋恋豆花』

 

『恋恋豆花』

・あらすじ

母親を幼いときに亡くした森下奈央(モトーラ世理奈)は、父親の提案により父親の婚約者である綾(大島葉子)と二人きりで台湾旅行をすることになる。
綾に対して心を開いていない奈央は行きたくないと心の中で思うのだが、そのままの流れで台湾へ行くことになる。
いざ台湾に着いても奈央はなかなか心を開くことが出来ずに、ほとんど会話も無いまま時が過ぎていくのだが、美味しい料理やスイーツ、風光明媚な街並み、優しい人々との出会いを体験していくうちに綾に対して徐々に心を開いていく。
婚約者の娘である奈央に対して「本当の親子のようになりたい」と願う綾は、果たして今回の旅行をきっかけにその願いをかなえることが出来るのだろうか。

・はじめは台湾を紹介するロケのような雰囲気

台湾についた奈央と綾はさっそく台湾の観光名所でもある九份という町へ出向き、綺麗な街並みや美味しい料理・スイーツなどを堪能する。
その際には料理名・スイーツ名のテロップが入り、奈央がナレーションで料理・スイーツの紹介をする。
その様はさながら情報番組などでお笑い芸人やタレントなどが街を歩き回りながらお店を紹介するロケのようである。
初めて観るような料理が出てきた際にもちゃんと説明してくれるため、置いて行かれるということもなく楽しんで観ることが出来るのではないだろうか。
始めに訪れた九份という街はどうやらスタジオジブリの名作『千と千尋の神隠し』に出てくる街並みのモデルになった場所らしく、やたら『千と千尋の神隠し』を連呼していたのが若干気になったが・・・(笑)

・継母候補と二人きりでの気まずい旅行

父親の婚約者であるというだけで、まったく仲良くもない女性と二人きりでの海外旅行。
自分だったら絶対に行きたくないと思うし、実際に作中内においても奈央はあからさまに嫌なムードを態度に出しており、観ているこちらまで気まずくなってしまうほどであった。
「二十歳になったいい大人がそこまで露骨に態度に出すのもどうなの?」と思うくらい毛嫌いしているのが画面を通してひしひしと伝わってきていたので、「さすがに綾がかわいそうでしょ・・」と少し同情してしまう。
しかし台湾の美味しい料理やスイーツを食べ進んでいくうちに、奈央の機嫌も徐々によくなっていき、2日目にはあれだけ毛嫌いしていた綾とも少しずつ話すようになり、画面越しの筆者は少しほっとしたものである。
気まずい相手との壁を見事にぶち壊してしまうほど美味しい台湾料理・スイーツ・・・。
ぜひとも子どもの頃にケンカ別れして以来会っていない友人を連れて行って食べてみたいものである。

・序盤は良かったのだが・・・

ストーリーの入り方や台湾の街並みがとても良かったため、このまま楽しめるのかと思っていたのだが、中盤辺りから中だるみ感が半端なく観ていて途中で飽きてきてしまった。
途中一期一会的な出会いもいくつかあり、ストーリーに変化をつけようとしているのが分かるが、そんな努力もむなしくとても単調に感じてしまい観ているのが辛くなってきてしまったのだ。
また、奈央が心の中の声をパペットを使い声色を変えて急にしゃべりだすという演出がところどころであるのだが、観ていて少し痛々しいと感じた。
たまに似たような演出を使った映画を見かけるが、そのような演出はすべからく廃止すべきではないかと個人的には思う。

・評価:★★☆☆☆(2点/5点満点中)

基本的に海外旅行にあまり興味のない筆者であるが、前々から台湾だけは行ってみたいと思っていたためストーリーの序盤においては、見慣れない街並みや食べ物にドキドキわくわくしながら観ることが出来たのだが、途中からは異文化に対する耐性がついてしまい、飽きてしまったというのが正直な感想である。
もう少しストーリーが面白ければ評価も変わっていたかもしれないと思うと少し残念だ。
しかしながら作中に出てきた料理やスイーツはどれもおいしそうで、中でも本作のタイトルにも使われている豆花(トウファ)というスイーツがとりわけおいしそうだったので、日本で食べられるお店を探してチャレンジしてみたいと思った。

・スタッフ・キャスト

【監督・脚本】

今関あきよし

【脚本】

いしかわ彰

【キャスト】

森下奈央:モトーラ世理奈
塚田綾:大島葉子
森下博一:利重剛
中山清太郎:椎名鯛造
Gladys TSAI
真宮葉月
シー・チーティエン
ビッキー・パン・ズーミン
山田知弘
友咲まどか
龍羽ワタナベ
洸美-hiromi-
芋生悠
落合真彩
桐生桜来
藤原希
梶健太

#10『地雷を踏んだらサヨウナラ』

地雷を踏んだらサヨウナラ

・あらすじ

フリーランスの戦場カメラマンである一ノ瀬泰造浅野忠信)は、ベトナム戦争が激化する1972年、戦場の様子を撮影するためにカンボジアにいた。
カンボジアの反政府勢力であるクメールルージュと政府軍との戦いが激しく行われている中、日々命の危険にさらされながら撮影に臨む一ノ瀬だったが、なかなか自身が思うような写真が撮れずに悩んでいた。
そんな中クメールルージュの拠点であるアンコールワットの写真を撮ることが出来れば、2万ドルもの大金が手に入ると知った一ノ瀬は、何としてでもアンコールワットの写真を撮ろうと試みるが手前で捕まり、強制的に国外追放されてしまう。
それでもどうしてもアンコールワットの写真を撮ることがあきらめきれない一ノ瀬は、一旦ベトナムに渡りカンボジアへ入国しようと試みるのだが、果たして無事にアンコールワットの写真を撮ることが出来るのだろうか。

・歴史に詳しくなくても大丈夫

筆者は歴史や国際情勢などに詳しくないため、ベトナム戦争を題材にした映画ということもあって、正直観る前は「内容についていけるかな」と不安であったが、一度観始めてしまうとそんなこと関係なく無知な私でもとても楽しく観ることが出来たし、非常にいい歴史の勉強にもなったと思う。
あらすじだけを観るとつい敬遠したくなってしまうなんていう人もいるかもしれないが、肩の力を抜いて観てもらえるといいかもしれない。

・熱い情熱を持った主人公

ストーリーを観ていくうちに、徐々に「なんで彼はこんな危険な目に何度も遭いながらも戦場カメラマンなんて続けるんだろう?」と疑問が生じてくる。
滞在先のプノンペンではわが子のように可愛がる子供たちが空爆の被害に遭うし、ベトナムでは大切な仲間が銃弾を胸に受けて命を落としてしまうし、自身だって頭を撃たれるも奇跡的にヘルメットを2重にかぶっていたおかげで難を逃れることが出来たという経験を持っている。
自分だったらわざわざそんな危険なところへなんて行きたくないと思ってしまうのだが、こういう人たちは我々一般人には到底理解することが出来ない熱い情熱を胸の内に秘めており、それに基づいて行動しているのであろう。
海外の戦争に傭兵として参加する人たちもそうであるが、自分の命を投げ出してまで抑えきれない情熱があるというのはある意味うらやましいことである。(自分はそこまで出来ないけどね)

・評価:★★★★★(5点/5点満点中)

題材が題材なだけになかなか観るのに躊躇したが、観始めてしまうとサクサクとストーリーが展開していき、思っていた以上にリラックスして観ることが出来た。(途中かなり痛ましいシーンはあったが・・・)
また主演を務めた浅野忠信の演技がとても素晴らしく、見事に熱い情熱を持った男一ノ瀬泰造になりきっていたのも本作を観る上においては大きなポイントであると言えるだろう。
「こういう映画はちょっと・・・」などと敬遠している方は、ぜひ騙されたと思って観てみてほしい。

スタッフ・キャスト

【監督】

五十嵐匠

【脚本】

丸内敏治、五十嵐匠

【原作】

一ノ瀬泰造

【キャスト】

一ノ瀬泰造浅野忠信
ロックルー:ソン:ダラカチャン
ティム・ヒル:ロバート・スレイター
マダム:ペン・ファン
一ノ瀬清二:川津祐介
一ノ瀬信子:市毛良枝
一ノ瀬淑乃:羽田美智子
レ・ファン:ボ・ソンフン
一ノ瀬紀子:三輝みきこ
一ノ瀬久美子:山田咲那
松山:矢島健一
チャンナ:ピンヨウ・ジェーンソンブーン
ソッタ:オーパ:ジェーンソンブーン