映画素人の映画評論

「Amazonプライムビデオで映画を観たいけど何を観たらいいか分からない」という方のために、実際にAmazonプライムで観た映画を評論していきたいと思います。ぜひ参考にしていただければ嬉しいです。

#9『ベイビーブローカー』

『ベイビーブローカー』

・あらすじ

赤ちゃんを産んだけど様々な理由によりわが子を育てることが出来ない母親にとっての
最後の助け舟「赤ちゃんポスト」。
ある雨の降る夜、若い女ソヨン(イ・ジウン)は不倫相手の男との間に出来た赤ん坊を「赤ちゃんポスト」の前に置いて去って行った。
しかし実はその赤ちゃんポストには、ある犯罪の絡んだ知られざる秘密があった。
クリーニング店を営むも借金に苦しむサンヒョン(ソン・ガンホ)と、「赤ちゃんポスト」が設置されている施設で働くドンス(カン・ドンウォン)がグルになり、預けられた赤ちゃんを子どもが出来ない夫婦に売りさばくという、いわゆる人身売買が行われていたのだ。
そうとも知らず、翌日思い直して戻ってきたソヨンは自分の子どもがいないことに気づき二人を問い詰めると、これから買い手のもとに赤ちゃんを売りに行くと告白する。
成り行きでなぜかソヨンもついていくことになるのだが、果たしてどのような結末を迎えるのであろうか。

・監督・脚本はなんと是枝裕和

監督と脚本は誰だと気になり調べてみたら、なんと「誰も知らない」・「そして父になる」・「万引き家族」など数々のヒット作品を作り出してきた是枝裕和であったのだ。
その中の一つでもある「万引き家族」はご存知の方も多いと思うが、あのカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した名作である。
そして本作で主演を務めているソン・ガンホといえば日本でも話題になった「パラサイト半地下の家族」で主演を務めており、こちらもまたカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞している。
これはまさにパルムドールの最強タッグと言っていいだろう。

・子どもを捨てた母親の葛藤

物語の途中、ところどころでソヨンの心の葛藤が垣間見える場面がある。
自分の子どもなのに抱っこしているのは常にサンヒョンかドンスだったり、赤ちゃんに対して話しかけるようなことも一切しない。
それどころかあまり見ようともしていないということが観ていてとても気になったのだが、ドンスに「子どもの面倒をあまり見ないのは別れるときに辛くなるからだろ」というようなことを言われるシーンを観て「なるほどそういうことだったのか」と納得出来た。
いくら一度捨てたとはいえ、やはり自分がお腹を痛めて産んだ子どもとの別れというのは、想像を超えた悲しみや辛さがあるのだなと感じた。

・捨てられた子どもにとって何が幸せなのか?

本作を観ていて考えさせられたのが、捨てられた子どもにとって何が幸せなのかということである。
通常であれば赤ちゃんポストに捨てられた子どもは児童養護施設に預けられるのだが、本作のように違法でありながらも、子どもが欲しいと願っている裕福な夫婦のもとで本当のわが子のように育てられるのが良いのか、あるいは貧しい思いやさみしい思いを抱えながらも血のつながった実の母親に育てられるのが良いのか・・・。
是枝裕和らしい非常に考えさせられる映画である。

・評価:★★★★☆(4点/5点満点中)

前情報をまったく知らずに観はじめたのだが、観終わってから監督・脚本が是枝裕和だと知って「あ~確かに是枝裕和っぽかったな」と妙に納得出来る作品であった。
サンヒョンとドンスは確かに人身売買という違法行為を行っている犯罪者であるのだが、なぜか感情移入出来てしまうのはおそらくお金目的だけでなく、売られていった子どものこともちゃんと考えているからであろう。
万引き家族」でもそうだったが、是枝裕和は犯罪者であるにもかかわらず主人公を視聴者に感情移入させるのが上手いなと感じた。

・スタッフ・キャスト

【監督・脚本】

是枝裕和

【キャスト】

サンヒョン:ソン・ガンホ
ドンス:カン・ドンウォン
ソヨン:イ・ジウン
スジンペ・ドゥナ
イ刑事:イ・ジュヨン

#8『パーム・スプリングス』


『パーム・スプリングス』

・あらすじ

アメリカ合衆国カリフォルニア州の南部に位置するパーム・スプリングスにて、とあるカップルの結婚式が行われた。
その結婚式に参加していたナイルズ(アンディ・サムバーグ)は、新婦の姉として同じく参加していたサラ(クリスティン・ミリオティ)を口説き、いい感じの仲になることに成功した。
人気のない岩場にてロマンティックなムードになっていると、突然謎の老人ロイ(J・K・シモンズ)が現れボーガンでナイルズを撃ち殺そうとする。
ロイから逃げようと洞窟に入っていくナイルズを追いかけるサラに対して、ナイルズは「ついてくるな」と追い返そうとするが、状況が飲み込めない彼女は聞く耳を持たず、彼のいる洞窟の奥地までやってくると、謎の赤い光に包み込まれてしまう。
気が付くとサラはベッドの上で寝ており、起きてみると何かがおかしいことに気づく。
なんと彼女は結婚式当日の朝に戻っていたのだ。
ナイルズを問い詰めると、あの洞窟で赤い光に包み込まれたせいで、彼は何度も今日という一日を繰り返す、いわゆるタイムループをしているということが分かる。
果たして彼らはタイムループを抜け出し、無事に明日という日を迎えることが出来るのだろうか。

・寝てもダメ、死んでもダメ

大体どのタイムループ作品にも共通して言えるのが、寝てもダメ・死んでもダメということである。
寝て起きたらまた同じ日に戻っていたというのであれば、まだ何となく理解できそうなものであるが、死んでもまた同じ日に戻ってしまうというのがよく分からない。
死んだらもうそれで解放してあげなよとつい思ってしまうのだが、そんな私の願いもむなしく起きたらまた同じ日を繰り返してしまう。
本作においても彼らは幾度となく死ぬのだが、決して物理的な死というものはやってこず、ただただ痛い思いをするだけなのである。
物語の途中でナイルズはロイの家に乗り込んで話し合うのだが、帰りの渋滞に巻き込まれるのが面倒くさいというそれだけの理由で、ロイにボーガンで撃ち殺してもらうというシーンがある。
それを観たときに「そんなに命を粗末にするなよ」と思ってしまったのだが、何十万回も同じ日を繰り返している彼にとっては、死ぬということはひょっとしたら大したことでないのかもしれない。
そう考えると長く生きれば生きるほど、考え方も達観していくというのは実に合理的なのではないだろうか。

・果たしてどちらが幸せなのか・・・

本作を観ている最中にふと「このまま永遠に同じ日を繰り返すのも良いのではないか」と思ってしまった。
まだ若いナイルズはタイムループを繰り返している最中に、たくさんの女性と良い関係になっている。
またどうせ明日はやってこないと思えば、我慢などせずに自分のやりたいことを思い切り躊躇なく行うことが出来る。
一方で明日がやってくるということは、やりたくないことも我慢してこなし、一生死ぬまでお金の心配をしながら生きていかなくてはならないということなのである。
そう考えるとこのまま戻らずにいた方が幸せなのではないかと、ついつい考えてしまう。
まあ冷静になって考えれば、死ぬことすら出来ずに延々と同じ日を繰り返すということがいかに恐ろしいことかが分かるんだけどね。

・評価:★★★★☆(4点/5点満点中)

同じ日を繰り返すというのは、主人公の立場になって考えてみると物凄く恐ろしいことだと思うのだが、ナイルズは意外とそこまで重く受け止めずに、その状況を楽しんでいるように見えたのが観ているこちらの立場としてもさらっと観れたので良かった。
ただこのようなタイムループ物って落としどころがとても難しく、どのような終わり方にするかによって評価も大きく変わってくるのではないかと思う。
最終的にどうなったかはネタバレになってしまうため言えないので、気になるという方はぜひご自身の目で確かめてみてください。

・スタッフ・キャスト

【監督】
マックス・バーバコウ

【脚本】
アンディ・シアラ

【キャスト】
ナイルズ:アンディ・サムバーグ
サラ:クリスティン・ミリオティ
ロイ:J・K・シモンズ
ミスティ:メレディス・ハグナー
ハワード:ピーター・ギャラガー

#7『パーフェクト・バディ最後の約束』

『パーフェクト・バディ最後の約束

・あらすじ

チンピラのヨンギは自らが管理する店に、対立する組のチンピラが来店していることを知ると、彼らのいる部屋に一人で乗り込みボコボコに叩きのめしてしまう。
その事件の償いとして、社会奉仕活動150時間を命じられたヨンギは、全身まひにより車いす生活を送る元エリート弁護士ジャンスの元へ行き、彼の介助を行うことになる。
はじめは気の合わない二人だったが、ともに長い時間を過ごしていくうちに、徐々に気を許しあうようになっていく。
余命宣告を受け自分の命があとわずかだということを知っているジャンスは、会社の金を使い込み困っているヨンギに対して、自分のやりたいことを手伝ってくれれば、自身の死亡保険金の受取人にしてやると持ち掛けるのだが、果たして彼のやりたいこととは一体何なのだろうか?
そして無事にそれをやり遂げることが出来るのだろうか?

・正反対の性格の二人が徐々に距離を縮めていく

チンピラのヨンギと元エリート弁護士のジョンス。
普通に生活をしている限り絶対に出会うことがないはずの2人が出会ってしまった。
そして水と油のように混じり合うことの無いほど真逆の性格の二人が、時の経過とともにだんだんと距離を縮めていく。
はっきり言ってよくあるパターンだなと思ってしまった。
そして余命宣告を受けているジョンスが最終的にどうなってしまうんだ?という、奇跡的に死ななかったとしても余命宣告通り亡くなってしまったとしても、いずれにせよお涙ちょうだい的なストーリーであるということが始めから読めてしまう。
もう少しひねりが欲しかったなというのが正直な感想である。

・チョ・ジヌンとソル・ギョングのW主演

一時期韓国映画にはまってよく観ていたので、俳優の顔を見ると名前は分からないまでも「あっ!あの映画に出てた人だな」とわかるのだが、ジョンス役のソル・ギョングという人は本作で初めて知った。
初めて登場したときに一瞬大泉洋に見えてしまったのだが、それはきっと『こんな夜更けにバナナかよ』という映画で大泉洋車いすに乗っていたため、より一層脳内でバグを起こし似ているように見えてしまったのであろう。
一方ヨンギ役のチェ・ジヌンは、最近日本でもリメイクされ、岡田准一が主演を務めて話題にもなった『最後まで行く』という映画に出ていたのですぐに分かった。
『最後まで行く』では主人公と敵対する役を怪演していたのだが、不気味さと恐ろしさでめちゃくちゃ怖かったという記憶があり、本作で主役として登場してきたときは記憶がフラッシュバックし一瞬冷や汗をかいた。
もちろん役柄がまったく異なるので、すぐにその緊張はなくなったのだが、そう考えると役者さんって凄いなと改めて感心させられる。

・評価

★★★☆☆(3点/5点満点中)

先ほども述べた通りどこにでもあるようなワンパターンな内容であり、どこかしらで何かひねりがあるのかなと期待していたのだが、結局最後まで予想通りの展開であったため、特筆すべき点が無かったのが残念に思われる。
感動させようという意図があったと思われるが、正直言って観ていても感動できるシーンが無かったというのが本音である。

・スタッフ・キャスト

【監督】
ヨンス

【脚本】
ヨンス

【キャスト】
カン・ヨンギ:チョ・ジヌン
ハン・ジャンス:ソル・ギョング
ブンド:ホ・ジュノ
ウノ:キム・サラン
ク・デグク:チン・ソンギュ

#6『Focus(フォーカス)』

『Focus(フォーカス)』

・あらすじ

相手の心理をうまく活用し、天才的なスリの腕や詐欺の手口を使って次々とターゲットから金品を奪っていく犯罪グループのリーダーニッキー(ウィル・スミス)は、同じくスリや詐欺を生業としているジェス(マーゴット・ロビー)と偶然出会う。
ニッキーの天才的なスリや詐欺の才能に魅了されたジェスは自分を仲間にしてほしいと懇願する。
ジェスを自身の犯罪グループの仲間に引き入れたニッキーは、大きな仕事を見事成功させて大金を得るが、それと同時にジェスに別れを告げてしまう。
それから3年後、大きな仕事を成功させるためモーターレースチームのオーナーであるガリーガ(ロドリゴ・サントロ)と接触するのだが、そこで3年ぶりに偶然ジェスと出会う。
彼女との出会いによってニッキーの心は大きく乱れていくのだが、果たして計画はうまくいき大金を得ることが出来るのだろうか?

・ジャンル分けが難しい

本作をジャンル分けすると何になるのだろうと考えたのだけど、「これだ!」というものが思い当らなかった。
サスペンスやミステリーっぽいけどちょっと違うし、アクションでもないしラブロマンスでもない。
登場人物の一人であるファハド(エイドリアン・マルティネス)には少しコメディ要素があるが、かといってコメディ映画かと問われるとそうでもない。
ジャンル分けが出来ないというのはなかなか珍しいけど、その分好みも偏らないため幅広い人が楽しめる作品となっているのではないだろうか。

・中盤とラストで見事にだまされた

天才的な詐欺師を描いた映画のため、ところどころで視聴者を見事にだます演出がされている。
あまり書いてしまうとネタバレとなってしまうため、詳細については述べないが「まじか・・・」と思わされる”詐欺”がいくつか散りばめられているので、ぜひだまされてほしい。
また途中で伏線と思われるセリフが出てくるのだが、後になって「なるほどあれはそういうことだったのか」と気付かされるあたりがとても憎い。
ここで述べることが出来ないのがとても歯がゆいのだが、特にラストは「えっ!そうだったの!?」とびっくりすることになると思うので、気になるという方は最後まで気を抜かずに観てみるといいだろう。

・評価

★★★★☆(4点/5点満点中)

正直言ってしまうと途中までは特にドキドキハラハラする場面もなく、中だるみ感が否めなかったのだが、ラスト20分くらいから事態が急展開し始める。
「見事にだまされた」という衝撃的な展開があったため評価は4点とさせていただいたが、それがなくダラダラとストーリーが続いていたら2点くらいだったかもしれないので、とにかくそこはお見事としか言いようがない。
サプライズが好きな人にとってはどんぴしゃではまると思うので、最後の最後まで楽しんで観ることが出来るのではないだろうか。

・スタッフ・キャスト

【監督】

グレン・フィカーラ
ジョン・レクア

【脚本】

グレン・フィカーラ
ジョン・レクア

【キャスト】

ニッキー:ウィル・スミス
ジェス:マーゴット・ロビー
ガリーガ:ロドリゴ・サントロ
オーウェンズ:ジェラルド・マクレイニー
ファハド:エイドリアン・マルティネス
マキューエン:ロバート・テイラー
リ・ユァン:B・D・ウォン

#5『劇場版おいしい給食卒業』

『劇場版おいしい給食卒業』

・あらすじ

黍名子中学校3年の担任である甘利田幸男(市原隼人)は大の給食好きであり、給食のために学校に来ていると言っても過言ではない。
そんな彼がライバル視しているのが、自身が担任として受け持っているクラスの生徒である神野ゴウ。
神野もまた甘利田に負けないくらい給食をこよなく愛し、給食にすべてを懸けているのだ。
そんな二人であるが、表面上は平静を装っていながらも給食の時間になると熱いバトルが始まる。
いかに給食を美味しく食べることが出来るかという、二人だけの無言の戦いが行われるのである。
受験生である神野と受験生たちを受け持つ甘利田、二人の戦いは果たしてどのような結末を迎えるのであろうか?

・ドラマ版もある

本作はもともとドラマで放送されていたものの映画版であり、筆者もそのことは知っていたのだが、この映画を観てしまうとドラマ版も観たくなってしまうという懸念があったため、前々から気になっていたにもかかわらず敬遠してしまっていた。(ドラマは話数が多くて一度観始めてしまうと時間がかかってしまうため)
しかしそのような懸念なんぞ軽く吹き飛ばしてしまうくらい、この映画は最高に面白かった。
私の中にあるちっぽけな「懸念」は、まるで台風の日の紙切れのようにあっという間にはるかかなたへ吹き飛ばされてしまった。
あまりにも楽しい内容だったため、映画を観終わった後に同じくプライムビデオで観ることが出来るドラマ版を一気観してしまったことは言うまでもないだろう。

・甘利田が給食を好きな理由

甘利田がなぜ給食を愛してやまないのか。
その理由は序盤に彼の口から明かされるのだが、その理由に笑ってしまった。
「子どもの頃に食べたあの味が忘れられない」とか「給食のおばちゃんに恋をしていた」とか「給食の化身に命を救われたことがある」とか、もっと色々とポジティブな理由があるだろと思ってしまうほど、彼の給食への執着心というものはネガティブなものに起因しており、「そんな理由かい!」と突っ込んでしまいたくなるものなのである。
知りたいという方は、一番始めの方で語られるのでぜひ本作を観てみてほしい。

孤独のグルメが好きな人にははまるかも?

内容としてはまったく違うが、孤独のグルメが好きな人にはひょっとしたら本作もはまるのではないかと思う。
かくいう私も大の孤独のグルメファンなのであるが、食べるという行為をこよなく愛する人間が美味しそうに食事をするシーンというのは、観ていてとても気持ちが良いものである。
孤独のグルメを愛する筆者に対して、よく「おっさんがただひたすら食べるシーンを観て何が楽しいの?」などという愚問を投げかけてくる不届きものが筆者のまわりには多数いるが、そう聞かれた際の私の最適解はこうである。
「観ればわかる!」
確かに冷静に考えれば、ただひたすらにおっさんが食事をしているシーンを観て何が楽しいのだと思うかもしれないが、とにかく理論的思考は一切無視して「観ればわかる!」のである。
話は大幅にそれてしまったが、本作においても孤独のグルメと同じことが言えるのではないだろうか。
給食を愛する人間が大好きな給食をわくわくしながら美味しく食べる、ただそれだけで観ている側としては主人公の気持ちになって十分に楽しめるのである。

市原隼人という俳優について

筆者が主人公甘利田幸男を演じる俳優市原隼人を初めて知ったのが、『リリイシュシュのすべて』という映画である。
彼を初めて見たとき、当時ジャニーズで大人気を誇っていたタッキーこと滝沢秀明と見間違えるほど、物凄い綺麗な顔立ちをした美少年だと感じた。
それからおよそ20年の時が経った現在、彼は見違えるほどに男らしく渋みのある俳優になったと言えるのではないだろうか。
本作で演じる甘利田幸男という男は、生徒たちに厳しく一貫して主張を曲げない筋の通った教師であるが、そんな役どころにピッタリとはまっている。
また給食を食べるシーンでは人が変わったようにはしゃぎだすところも、しっかりと緩急をつけて違和感なく演じられているのがすごいなと感じた。

・評価

★★★★★(5点/5点満点中)

これは文句なしで5点満点と言っていいだろう。
こんなに面白いのだったらもっと早くに見ておけば良かったと感じるくらい、心の底から楽しいと感じる作品であった。
ドラマをすっ飛ばしていきなり映画を観てしまったため、そこまで登場人物たちに思い入れはないはずなのに、生徒たちが卒業するとなったときに「そっか、この子たちももう卒業しちゃうのか・・・」と感慨深くなってしまったからとても不思議である。
ドラマ版もめちゃくちゃ面白いからぜひ観てみてほしい。
出来ればドラマ版から観た方がより一層楽しめるのではないかと思う。

・スタッフ・キャスト

【監督】

綾部真弥

【脚本】

永森裕二

【キャスト】

甘利田幸男:市原隼人
宗方早苗:土村芳
神野ゴウ:佐藤大
牧野文枝いとうまい子
四方田岳:登坂淳一
鏑木:直江喜一
箕輪光蔵:酒井敏也

#4『深呼吸の必要』

・あらすじ

沖縄でサトウキビを刈る仕事「キビ刈り隊」に応募した立花ひとみ(香里奈)。
フェリーに乗って目的地に着いた彼女は、同様にキビ刈り隊としてやってきた他のメンバーと共に迎えを待っていると、軽トラに乗った田所豊(大森南朋)が迎えに来る。
そして言われるがまま全員軽トラの荷台に乗り込むと、車は目的地であるおじいとおばあの家に到着する。
優しいおじいとおばあに出迎えられ、翌日から始まる仕事のことについて説明を受ける彼女たちは厳しい条件に少し戸惑いを見せるのだが、果たして無事に仕事をこなすことが出来るのだろうか。

・沖縄が舞台

何を隠そう沖縄が大好きな筆者は、3度の飯より沖縄映画が大好きである。
本作も沖縄を舞台にしており、沖縄フリークとしてはマストウォッチタイトル(英語間違えてたらすいません・・・)であろうと考え、ひとまずややこしいことは一切考えずに観てみることにした。
その結果大当たりである。
沖縄というアドバンテージを抜きにしても、登場人物たちそれぞれのキャラクター、ストーリー、雰囲気は個人的におもしろいなと感じた。

・個性豊かな「キビ刈り隊」

普段は派遣で生計を立てており今回長期休みを取って沖縄にやってきたひとみ、やたら先輩面をし偉そうにあれこれとうるさく口出ししてくる豊、礼儀正しく和を乱すようなことはしない真面目な最年長の池永(谷原章介)、口うるさい豊に対して反抗的で他人には知られたくない過去を隠し持っている西村(成宮寛貴)、長いつけ爪を着けたり豊のことを「おっさん」と呼ぶなどギャル全開キャラの悦子(金子さやか)、他人とのかかわりを極端に避け誰とも口をきこうとしない高校生の加奈子(長澤まさみ)など、キビ刈り隊としてやってきたのは個性豊かなメンバーばかり。
そんなクセの強いメンバーで力を合わせ、果ての見えないサトウキビを納期までにすべて刈り取らないといけないのだが、なかなか一筋縄でいくはずもなく、いくつもの困難を乗り越えていかないといけない羽目になっていく。
まあどんなストーリーであれ、映画である以上は必ず何かしらの事件や問題はつきものであって、それに対して主人公たちが立ち向かっていくというのは当然の流れだよね。

・いかにも沖縄らしいおじいとおばあ

今回印象に残ったのが、そんな個性豊かなキビ刈り隊を優しく出迎えてくれたおじいとおばあの存在である。
反抗的で文句ばかり言う西村や悦子、無口で誰ともしゃべろうとしない加奈子など、いわゆる問題児といわれるようなメンバーに対しても、おじいとおばあは沖縄独特のイントネーションで優しく話しかけてくれるのだ。
たとえ何か問題が起こったとしても「なんくるないさー」と言って、決して責めるようなことはしないおじいや、みんなのために毎日美味しい料理をふるまってくれ「たくさん食べてね」と言ってくれるおばあは、キビ刈り隊たちのことをまるで本当の孫のようにかわいがってくれているのが見てわかる。
沖縄に旅行に行ったらホテルに泊まるのではなく、このようなおじいとおばあが経営しているような民宿に泊まって、おじいとおばあの優しさに触れてみるのもいいのではないかと思った。

・評価

★★★★☆(4点/5点満点中)

ひたすらサトウキビを刈り続けるという内容のため、沖縄好きの筆者的にはもう少し沖縄を感じられる描写がほしかったなというのが正直な感想である。
しかし、個性豊かなメンバーたちが優しいおじい・おばあとともに一つ屋根の下で暮らしていくうちにだんだんと距離が近くなっていき、みんなが一つの目標に向かって本気で取り組む姿というのは、観ていて心がほっこりした。
沖縄が好きな人はもちろんだが、そうでない人でも十分楽しめる内容になっていると思うので、興味がある人はぜひ観てみてほしい。
またこれは余談であるが、基本的にエンドロールは飛ばす派の筆者であるが、エンディングの曲がとても良く、聞き入っていたらいつの間にかエンドロールをすべて見終わっていた。
My Little Loverの「深呼吸の必要」という曲らしいのだが、気になる方がいたらぜひエンドロールも楽しみにしていてほしい。

・スタッフ・キャスト

【監督】

篠原哲雄

【脚本】

長谷川康夫

【音楽】

小林武史

【キャスト】

立花ひなみ:香里奈
田所豊;大森南朋
池永修一:谷原章介
西村大輔:成宮寛貴
川野悦子:金子さやか
土居加奈子:長澤まさみ
辻元美鈴:久遠さやか
おじい:北村三郎
おばあ:吉田妙子
飲み屋の店長:上地雄輔

#3『MUD(マッド)』

・あらすじ

アメリカ南部アーカンソーに暮らす14歳の少年エリスは、洪水によって木の幹に引っかかったボートを自分たちの秘密基地にしようと、親友のネックボーンとともに両親に内緒でその場所に向かい、そこで怪しげな男マッド(マシュー・マコノヒー)と出会う。
はじめのうちは彼を怪しみ警戒していた2人だったが、話をしていくうちに徐々に親しくなっていき、次第にわけありで困っている彼を助けてあげるようになる。
そんな中、マッドがある男を殺し警察や殺した男の家族から追われている身であるということを知ったエリスとネックボーンは、木の幹に引っかかって壊れているボートを直し、街にいる恋人のジュニパーを呼び寄せ一緒にメキシコ湾まで逃げるつもりであるということを彼から打ち明けられる。
恋愛に憧れを抱き愛を過信しているまだ幼いエリスは、マッドのジュニパーに対する想いに感銘を受け、彼の逃亡の手助けをするようになる。
はたしてマッドは恋人のジュニパーと再会し、警察や追手から無事に逃げ出すことが出来るのだろうか。

・冒頭はなんとな~くスタンドバイミーっぽい

両親に内緒で秘密の場所に向かう少年たちを描いた冒頭シーンは、大好きで何度も見返した不朽の名作『スタンドバイミー』を彷彿とさせた。
特にネックボーンを初めて見たときに、『スタンドバイミー』でクリスチェンバース役を演じた伝説の俳優リバーフェニックスと一瞬見間違えるほど似ていると感じた。
そうなってくると頭の中であの名曲の「ボン・ボン・ボボ・ボン・ボン」というイントロが流れ始めるのである。
村上春樹風に言わせてもらうならば、望むと望まざるとにかかわらず否応なしにかの名曲のイントロが脳内で再生される。
しかしながら、冒頭の雰囲気が似ているとは言えども、もちろんストーリーはまったく異なるものだ。
そして決定的な違いは、少年と大人との深いかかわりである。
もちろん『スタンドバイミー』でも売店のおじさんやフェンス越しに罵り合うおじさんなど、多少なりとも大人とのやりとりはあったが、本作のようにがっつりと対等に大人とかかわり合うという部分はなかった。
大人になりたがる少年が、わけありで社会とのかかわりを絶っている大人との交流を深めていくというストーリーによって、主人公たちの心の成長を描いているのであろう。
とはいえ途中沼に落ちてぬまヘビに噛まれるなど、『スタンドバイミー』でヒルに血を吸われるシーンのオマージュか?と思わせるようなシーンもあったため、ひょっとすると製作者も多少意識している節はあるのかもしれないけどね。

・愛を信じ愛に裏切られ大人になっていく

本作で強調して描かれているのが、主人公エリスの「愛」に対する想いではないだろうか。
まだ恋愛をよく知らない彼は愛を過信し、愛は不滅であり、愛があればすべて上手くいくと考えていた。
実際にマッドがいまだにジュニパーを愛し、彼女のことを待ち続けているということを知ったエリスはそれだけの理由で、殺人を犯し警察に追われている身であるマッドのことを信じ助けようとしているのが分かる。
しかしそんな彼だったが、辛く切ない出来事によって愛に対する想いが変化していく。
作中において父親や向いの家に住むトムから「女というものは自分勝手でわがままな生き物である」と助言を受けるもそれを信じないエリスだったが、意中の相手からひどい仕打ちを受け心の中で徐々に自分の信じていたものが崩れていったのだ。
そうして愛というものは完ぺきではないということを知った彼は大人の階段を昇っていくのである。

・怪しげな人物が助けてくれるという胸アツ展開

子供のころに観た『ホームアローン』という映画。
兄弟たちと一緒に家の窓から外を除くとスコップを持った怪しいおじさんが・・・。
近所の家に住む人物なのだが、そんな彼のことを兄弟たちは「あのスコップで自分の家族を殺した殺人鬼である」と噂をする。
しかし実際に会って話をしてみると、当然ながらそんな噂は全くのデタラメで、普通に良いおじさんであるということが分かる。
そして主人公がピンチになった時にそのスコップを使って助けてくれるという展開は、子供ながらに胸がものすごく熱くなったことをよく覚えている。
そんな胸アツ展開が本作にもばっちりと用意されており、そのシーンを観たときにはまるで子供のころのようにものすごく興奮しながらついつい見入ってしまった。
あまり詳細に説明してしまうとネタバレになってしまうため、気になるという方はぜひそのシーンを楽しみに待っていてほしい。

・評価

★★★★☆(4/5点満点中)

正直言って始めはあまり期待しないで観はじめてみたものの、ストーリーや雰囲気が非常によく気が付いたら夢中になって観ていた。
少年だったエリスがマッドという男に出会うことによって成長していくさまは、観ていて童心に返ったような気持ちでわくわくしながら楽しめた。
『スタンドバイミー』が好きな人にははまると思うので、ぜひ観てみてほしい。
そして観終わった後には『スタンドバイミー』をまた観たくなっているのではないかと思う。
実際に私がそうだったから・・・。

・スタッフ・キャスト

【監督】
ジェフ・ニコルズ

【脚本】
ジェフ・ニコルズ

【キャスト】
マッド:マシュー・マコノヒー
エリス:タイ・シェリダン
ネックボーン:ジェイコブ・ロフランド
ジュニパー:リース・ウィザースプーン
トム:サム・シェパード
ゲイレン:マイケル・シャノン
キング:ジョー・ドン・ベイカー
シニア:レイ・マッキノン
メアリー・リー:サラ・ポールソン
カーバー:ポール・スパークス
メイ・パール:ボニー・スターディバント