映画素人の映画評論

「Amazonプライムビデオで映画を観たいけど何を観たらいいか分からない」という方のために、実際にAmazonプライムで観た映画を評論していきたいと思います。ぜひ参考にしていただければ嬉しいです。

#9『ベイビーブローカー』

『ベイビーブローカー』

・あらすじ

赤ちゃんを産んだけど様々な理由によりわが子を育てることが出来ない母親にとっての
最後の助け舟「赤ちゃんポスト」。
ある雨の降る夜、若い女ソヨン(イ・ジウン)は不倫相手の男との間に出来た赤ん坊を「赤ちゃんポスト」の前に置いて去って行った。
しかし実はその赤ちゃんポストには、ある犯罪の絡んだ知られざる秘密があった。
クリーニング店を営むも借金に苦しむサンヒョン(ソン・ガンホ)と、「赤ちゃんポスト」が設置されている施設で働くドンス(カン・ドンウォン)がグルになり、預けられた赤ちゃんを子どもが出来ない夫婦に売りさばくという、いわゆる人身売買が行われていたのだ。
そうとも知らず、翌日思い直して戻ってきたソヨンは自分の子どもがいないことに気づき二人を問い詰めると、これから買い手のもとに赤ちゃんを売りに行くと告白する。
成り行きでなぜかソヨンもついていくことになるのだが、果たしてどのような結末を迎えるのであろうか。

・監督・脚本はなんと是枝裕和

監督と脚本は誰だと気になり調べてみたら、なんと「誰も知らない」・「そして父になる」・「万引き家族」など数々のヒット作品を作り出してきた是枝裕和であったのだ。
その中の一つでもある「万引き家族」はご存知の方も多いと思うが、あのカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した名作である。
そして本作で主演を務めているソン・ガンホといえば日本でも話題になった「パラサイト半地下の家族」で主演を務めており、こちらもまたカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞している。
これはまさにパルムドールの最強タッグと言っていいだろう。

・子どもを捨てた母親の葛藤

物語の途中、ところどころでソヨンの心の葛藤が垣間見える場面がある。
自分の子どもなのに抱っこしているのは常にサンヒョンかドンスだったり、赤ちゃんに対して話しかけるようなことも一切しない。
それどころかあまり見ようともしていないということが観ていてとても気になったのだが、ドンスに「子どもの面倒をあまり見ないのは別れるときに辛くなるからだろ」というようなことを言われるシーンを観て「なるほどそういうことだったのか」と納得出来た。
いくら一度捨てたとはいえ、やはり自分がお腹を痛めて産んだ子どもとの別れというのは、想像を超えた悲しみや辛さがあるのだなと感じた。

・捨てられた子どもにとって何が幸せなのか?

本作を観ていて考えさせられたのが、捨てられた子どもにとって何が幸せなのかということである。
通常であれば赤ちゃんポストに捨てられた子どもは児童養護施設に預けられるのだが、本作のように違法でありながらも、子どもが欲しいと願っている裕福な夫婦のもとで本当のわが子のように育てられるのが良いのか、あるいは貧しい思いやさみしい思いを抱えながらも血のつながった実の母親に育てられるのが良いのか・・・。
是枝裕和らしい非常に考えさせられる映画である。

・評価:★★★★☆(4点/5点満点中)

前情報をまったく知らずに観はじめたのだが、観終わってから監督・脚本が是枝裕和だと知って「あ~確かに是枝裕和っぽかったな」と妙に納得出来る作品であった。
サンヒョンとドンスは確かに人身売買という違法行為を行っている犯罪者であるのだが、なぜか感情移入出来てしまうのはおそらくお金目的だけでなく、売られていった子どものこともちゃんと考えているからであろう。
万引き家族」でもそうだったが、是枝裕和は犯罪者であるにもかかわらず主人公を視聴者に感情移入させるのが上手いなと感じた。

・スタッフ・キャスト

【監督・脚本】

是枝裕和

【キャスト】

サンヒョン:ソン・ガンホ
ドンス:カン・ドンウォン
ソヨン:イ・ジウン
スジンペ・ドゥナ
イ刑事:イ・ジュヨン