映画素人の映画評論

「Amazonプライムビデオで映画を観たいけど何を観たらいいか分からない」という方のために、実際にAmazonプライムで観た映画を評論していきたいと思います。ぜひ参考にしていただければ嬉しいです。

#3『MUD(マッド)』

・あらすじ

アメリカ南部アーカンソーに暮らす14歳の少年エリスは、洪水によって木の幹に引っかかったボートを自分たちの秘密基地にしようと、親友のネックボーンとともに両親に内緒でその場所に向かい、そこで怪しげな男マッド(マシュー・マコノヒー)と出会う。
はじめのうちは彼を怪しみ警戒していた2人だったが、話をしていくうちに徐々に親しくなっていき、次第にわけありで困っている彼を助けてあげるようになる。
そんな中、マッドがある男を殺し警察や殺した男の家族から追われている身であるということを知ったエリスとネックボーンは、木の幹に引っかかって壊れているボートを直し、街にいる恋人のジュニパーを呼び寄せ一緒にメキシコ湾まで逃げるつもりであるということを彼から打ち明けられる。
恋愛に憧れを抱き愛を過信しているまだ幼いエリスは、マッドのジュニパーに対する想いに感銘を受け、彼の逃亡の手助けをするようになる。
はたしてマッドは恋人のジュニパーと再会し、警察や追手から無事に逃げ出すことが出来るのだろうか。

・冒頭はなんとな~くスタンドバイミーっぽい

両親に内緒で秘密の場所に向かう少年たちを描いた冒頭シーンは、大好きで何度も見返した不朽の名作『スタンドバイミー』を彷彿とさせた。
特にネックボーンを初めて見たときに、『スタンドバイミー』でクリスチェンバース役を演じた伝説の俳優リバーフェニックスと一瞬見間違えるほど似ていると感じた。
そうなってくると頭の中であの名曲の「ボン・ボン・ボボ・ボン・ボン」というイントロが流れ始めるのである。
村上春樹風に言わせてもらうならば、望むと望まざるとにかかわらず否応なしにかの名曲のイントロが脳内で再生される。
しかしながら、冒頭の雰囲気が似ているとは言えども、もちろんストーリーはまったく異なるものだ。
そして決定的な違いは、少年と大人との深いかかわりである。
もちろん『スタンドバイミー』でも売店のおじさんやフェンス越しに罵り合うおじさんなど、多少なりとも大人とのやりとりはあったが、本作のようにがっつりと対等に大人とかかわり合うという部分はなかった。
大人になりたがる少年が、わけありで社会とのかかわりを絶っている大人との交流を深めていくというストーリーによって、主人公たちの心の成長を描いているのであろう。
とはいえ途中沼に落ちてぬまヘビに噛まれるなど、『スタンドバイミー』でヒルに血を吸われるシーンのオマージュか?と思わせるようなシーンもあったため、ひょっとすると製作者も多少意識している節はあるのかもしれないけどね。

・愛を信じ愛に裏切られ大人になっていく

本作で強調して描かれているのが、主人公エリスの「愛」に対する想いではないだろうか。
まだ恋愛をよく知らない彼は愛を過信し、愛は不滅であり、愛があればすべて上手くいくと考えていた。
実際にマッドがいまだにジュニパーを愛し、彼女のことを待ち続けているということを知ったエリスはそれだけの理由で、殺人を犯し警察に追われている身であるマッドのことを信じ助けようとしているのが分かる。
しかしそんな彼だったが、辛く切ない出来事によって愛に対する想いが変化していく。
作中において父親や向いの家に住むトムから「女というものは自分勝手でわがままな生き物である」と助言を受けるもそれを信じないエリスだったが、意中の相手からひどい仕打ちを受け心の中で徐々に自分の信じていたものが崩れていったのだ。
そうして愛というものは完ぺきではないということを知った彼は大人の階段を昇っていくのである。

・怪しげな人物が助けてくれるという胸アツ展開

子供のころに観た『ホームアローン』という映画。
兄弟たちと一緒に家の窓から外を除くとスコップを持った怪しいおじさんが・・・。
近所の家に住む人物なのだが、そんな彼のことを兄弟たちは「あのスコップで自分の家族を殺した殺人鬼である」と噂をする。
しかし実際に会って話をしてみると、当然ながらそんな噂は全くのデタラメで、普通に良いおじさんであるということが分かる。
そして主人公がピンチになった時にそのスコップを使って助けてくれるという展開は、子供ながらに胸がものすごく熱くなったことをよく覚えている。
そんな胸アツ展開が本作にもばっちりと用意されており、そのシーンを観たときにはまるで子供のころのようにものすごく興奮しながらついつい見入ってしまった。
あまり詳細に説明してしまうとネタバレになってしまうため、気になるという方はぜひそのシーンを楽しみに待っていてほしい。

・評価

★★★★☆(4/5点満点中)

正直言って始めはあまり期待しないで観はじめてみたものの、ストーリーや雰囲気が非常によく気が付いたら夢中になって観ていた。
少年だったエリスがマッドという男に出会うことによって成長していくさまは、観ていて童心に返ったような気持ちでわくわくしながら楽しめた。
『スタンドバイミー』が好きな人にははまると思うので、ぜひ観てみてほしい。
そして観終わった後には『スタンドバイミー』をまた観たくなっているのではないかと思う。
実際に私がそうだったから・・・。

・スタッフ・キャスト

【監督】
ジェフ・ニコルズ

【脚本】
ジェフ・ニコルズ

【キャスト】
マッド:マシュー・マコノヒー
エリス:タイ・シェリダン
ネックボーン:ジェイコブ・ロフランド
ジュニパー:リース・ウィザースプーン
トム:サム・シェパード
ゲイレン:マイケル・シャノン
キング:ジョー・ドン・ベイカー
シニア:レイ・マッキノン
メアリー・リー:サラ・ポールソン
カーバー:ポール・スパークス
メイ・パール:ボニー・スターディバント